ココが社長室

佐藤尚之 様

佐藤尚之(さとなお)様

1961年東京生まれ。
株式会社ツナグ 代表取締役 / クリエイティブ・ディレクター
電通モダン・コミュニケーション・ラボ主宰

2011年4月に電通を退社。ソーシャルメディアを中心とした次世代ソリューションを扱うコミュニケーション・ディレクター、クリエイティブ・ディレクターとして活躍。東日本大震災「助けあいジャパン」を統括する。電通での代表作は「スラムダンク1億冊感謝キャンペーン」「星野仙一優勝感謝新聞広告」「NECショートフィルム『it』」など。JIAAグランプリ、新聞広告賞グランプリ、広告電通賞金賞、ACC賞など受賞多数。著書に『明日の広告』『明日のコミュニケーション』(ともに、アスキー新書)がある。


2回目のゲストは「さとなお」こと、コミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之さんです。前職からお付き合いがあった社長中尾のオファーによって、弊社での講演が実現。広告やコミュニケーションのこと、そして、その未来や可能性について独自の視点で熱く語っていただきました。14時から始まった講演でしたが、終わってみると時計は19時半に!参加者の脳を刺激し続けた濃密な5時間半は、あっという間に過ぎていきました。
今回の「ココが社長室。」は、その講演の内容を簡単にご紹介します。

講演の前半は、広告コミュニケーションの流れと、コミュニケーションデザインについて。後半は、著書『明日のコミュニケーション』をもとに、ソーシャルメディアのとらえ方からFacebookを中心とした活用法までお話いただきました。講演の中では、佐藤さんが実際に手掛けたコミュニケーションデザインの仕事などを紹介。コミュニケーションにおける生活者本位の発想やメディアニュートラルの重要性についてお話いただきました。

佐藤さんによると、ここ数年、メディアも生活者も多様化し「コミュニケーションデザイン」という言葉がもてはやされるようにはなってきたが、生活者を起点に精密に設計されたコミュニケーションはまだまだ少ないとのこと。コミュニケーションの主導権が生活者に移り、企業の生活者に対するアプローチの方法が問われるようになった今。大事なことは方法論よりも、発言者である企業が世の中のコミュニケーションの中で、どのような人格を持ち、どう生活者と関わっていくのかという、企業の姿勢や生き方ではないのか。そんなことを考えさせられた講演でした。

心に残った言葉

「今の時代、変化すること自体が価値となる」

業界でもまだWEBが重要視されていなかった時代から、いち早くWEBのコミュニケーションに着手。社内でも積極的に新しい提案を行うなど、時代の先を行くために常に変化し続けてきた佐藤さんの言葉には、ずっしりと重みがありました。

「目の前の若者に勝てるか」

50歳を迎えてもなお、強い闘志をもってストイックに仕事に挑み続ける佐藤さん。身が引き締まります。

Q&A

質疑応答の時間では、ソーシャルメディアの活用法などについて寄せられた質問に対して、さとなおさんが一つひとつ丁寧にお答えくださいました。その一部をご紹介します。

Q.Facebook、Twitterの次に来るSNSとは?

A.予測はしないんですよ。予測した時点で、思考がちょっと硬直するんですね。風が吹いたらそっちに曲がろうっていうくらい、自分を変化できるようにしておきたいです。「あ、こう変わってきたんだ。ふーん」っていけるようにしないと対応できない。対応できないとプロじゃないですからね。まあ、そのくらい今、コミュニケーションの世界は地殻変動が激しすぎる。地殻変動が激しいときに地に足ついていると揺れるから、どこに行っちゃうかわからない。どっちかっていうとちょっとふわっとしておきたい。まあ、あえて言うなら、「Facebook TV」とか出てくるでしょう。そうするとFacebookを見ているのか、TVを見ているのかわからなくなるんですね。その世界に何か新しいものが生まれると思っていますけど。

Q.これからのコミュニケーションデザインに従事する人にとって、一番重要な資質は何だと思われますか?

A.時代に対応して変化し続けるフレキシビリティ。人間って変化が一番恐いんですよ。専門の得意分野を持って、そこだけやっているのが一番楽なんですけど、恐れずに変化して成功体験を維持していく事が一番大事かな。

Q.広告業界で生き残っていくためには、どんなスキルを鍛えればいいでしょうか?

A.広告業界っていう領域感を持たない人材になってください。関係ないです。広告業界とかメーカーとか。コミュニケーションの世界は、業界に関係なく生活者を動かすことが必要。プロダクトも人の心を動かすよね。何でもそうですよね、お店だって、何だって。だから、あまり業界感を持たないっていうのが望まれることだと思います。

Q.高齢者に対してのコミュニケーションを、これからどうデザインしていくべきでしょうか?

A.高齢者ってひとくくりにできないと思っているので、ちゃんと調べたいですね。そこについて、決めつけたり、レッテルを貼るのはまず間違っていると思うんで、そこを自分では気を付けたいと思っています。それと、僕は高齢者を少し変えていくことに関与したいと思っています。つまり、日本って今こうだからさ、こういう風にコミュニケーションしようじゃなくて、日本を変えようっていうこともあるわけじゃないですか?例えば「無縁社会」って言葉があるけど、あれが変わると思っています。Facebookを始めれば分かるけど、だって多縁ですよね。小学校、中学校、高校ぐらいの関係性をずっと持っていく可能性があるよね。そうすると、60代、70代、80代って無縁なわけないんですよ。将来は多縁社会なんですね。高校時代の友達もずっと続いたままっていうのも嫌だけどね。でも、多縁社会になっていくと、とってもいいと思う。だったら、多縁社会になるように、高齢者の方々にFacebookやTwitterを覚えてもらう手はないかな?というような方向を僕は考えたいですね。

Q.今の若者に一番足りていないものは何でしょう?

A.僕は大学で教えているんですが、若い人をリスペクトしています。今、学生と新卒くらいの人たちは、とても素晴らしい。まあ、ゆとり教育の弊害を指摘される場合もありますけど、とても素晴らしい。数年前までは、目的なく金持ちになりたいとか成功したいっていう、変にギラギラした人が多かったんだけど、この3年くらいは本当に世の中のためになりたいとか、社会に貢献したいとか、人を幸せにしたいとか、そういう人がすごく増えてきたんですね。いろんなスキルを身につけて、いつかそういうことをちゃんとしたいとか、もしくは最初から冒険的にやっている若者が僕の周りにはすごく多い。日本もそこに希望があるんじゃないかと思っているくらいリスペクトしていますね。

僕は自分の個人会社の名前を「ツナグ」という名前にしています。前の会社で25年も4マスを考えてきたから、僕は、古い広告のシステムも、日本のシステムもよく分かるんですね。さらに、ソーシャルでもずっとやってきたから、若者のことも一応少しは分かっているつもりなんですよ。で、その両方が見えている僕や、僕なんかの年代が、そこを上手くつなぐ。おおげさに言うと、おじさん達や若者達、彼らの価値観とかも上手につないで日本変えたい、とちょっと思っているんですね。なかなか簡単には変えられないけど。

だけど、若者のそこら辺の思いとか、強いやる気とか、社会に貢献したいという気持ちは、すごくリスペクトしているし、そこを何とかするために、あと10年くらいやりたいなと思っているんです。なので、若者はおじさん達の言うことをあんまり聞かず、おじさん達が自分達に合わせてくれるのを待つというか、そのくらいの気持ちでガンガンやった方がいいと思います。おじさん達はおじさん達だからね。多分、今の20代前半しか日本を変えられないって思っているので。ごめん、30代を切り捨てたわけじゃない。切り捨てた訳じゃなくて、30代も多分20代の協力に回った方が僕はいいと思うんだよね。

伊藤さん:あっ、中尾社長は30代?

中尾:30代です。

伊藤さん:社長はもうバックアップに回った方がいい。

中尾:でもまだ、ビシバシやりますよ(笑)

伊藤さん:20代に負けないように、我々、上の世代は頑張るんだけど、でも、絶対日本を変えるのは20代だと思うな。若者の価値観がちょっと変わってきている。うん。

Q.企業と生活者のコミュニケーションは、これからどう変わっていくとお考えでしょうか?

A.限りなく江戸時代の商売に近づくと思いますね。1対1の商売です。昔はご用聞きとかあったじゃないですか。お客さんの冷蔵庫の中身まで知っているような。それと同じように、今って、友人のコンテクストとか文脈とか、友人が知っていること、欲しいものが、どんどん見えてくる時代ですよね。だから個々のコミュニケーションがより大事になってくるんじゃないかと思います。ザッポスなんかはそれを利用する。コールセンターを利用して、そういうコミュニケーションを強くやっていくわけです。それが勝ちパターンだと彼らはもう分かっているんですね。そっち側にいくんじゃないかと思います。

Q.江戸時代の商いに近づいていくんじゃないかというお話がありましたが、1対1のコミュニケーションが、具体的にどう変化していくのでしょうか?

A.全部がONEtoONEに戻るわけではないと思うんですけど、ただ、ずっとこの200年くらいを見てくると、マスマーケティングの時代だけ、ちょっと異常だと思うんですね。効率が。CMとかでポンっと一言いうだけで何百万人に伝わっちゃったよ、みたいなことって、実は異常だったんじゃないかって僕は思うんですね。その前って、やっぱりもうちょっと人と人の距離が近かったですよね。要するに近所のお店でコミュニケーションがあった。魚屋さんにしても、八百屋さんにしても、何にしても。これからは、あの時代に多少戻る感じだと思うんですよ。ちょっと非効率だと思えるような人間関係とか、顧客と生産者の関係とかに戻るんじゃないかな。そのバランスは分かりませんが。効率のいいコミュニケーションと、非効率的な地べたを這った、日常の付き合いのようなコミュニケーション。そのくらいのコミュニケーションの組み合わせが、ずっと続いていくと、大企業っていうのがだんだん減っていくんじゃないかと僕は思いますね(僕はさっき予測しないと言ったけれども)。それは、何十年何百年も経った後だと思うんですけど。ひょっとしたら200年後には、大企業って、なくなっているかもしれませんね。

さとなおさん、長時間のご講演ありがとうございました。
また弊社にお越しいただける日を楽しみにしております!