ココが社長室

浦田理恵 様

浦田理恵(うらたりえ)様

熊本県生まれ、福岡県在住。

20歳を過ぎて「網膜色素変性症」を発症し視力が急激に低下。 現在、左目の視力はなく、右目の視野は95%が欠損しており、強いコントラストのものしか判別できない。

2008年、ゴールボール選手として北京パラリンピックに出場。
今年8月から開催されるロンドン・パラリンピックの日本代表に選出される。


「ココが社長室。」第5回目のゲストは、ゴールボールでロンドン・パラリンピックの日本代表に選出された、浦田理恵さんです。弊社へ講演にお越しいただいたことをきっかけに、中尾との対談が実現。浦田さんに、モチベーションUPの秘訣、チーム力のつくり方や将来のビジョンなどをおうかがいしました。
今回は、その対談の模様をお届けします。

中尾:浦田さんはいつも元気で前向きで、素晴らしいと思います。どうしてそんなに高いモチベーションを保ち続けられるんですか?

浦田さん:それはやっぱり、どん底の自分があったからだと思っています。そこからだんだんと「ハンディがあるからこそ体験できることがある」「人の助けがないと生きられないからこそ、実感できることがあるんだ」という考え方にシフトしていきました。すると、感謝の気持ちがわいてきて「じゃあ、自分に何ができる?」と考えるようになり、プラス思考になっていきました。逆に、私は健常者の方のほうが大変なんじゃないか?と思うときがあります。だって、常に何でも出来て当たり前なわけじゃないですか。私たちはそういった意味では「ノープレッシャー」です。だから自分を表現しやすいのかもしれませんね。

中尾:浦田さんの講演を聞いて僕は、浦田さんの「助けられてる」っていう言葉が強く印象に残りました。「助ける」っていう感覚はよくあると思うんですが、「助けられてる」っていう感覚は、普段感じることってあまりないように思います。

浦田さん:人はつい「やってもらって当たり前だ」とか、自分がやってあげてるんだ」って思ってしまい、謙虚さを失いがちですよね。

中尾:100%な人なんていないし、それも含めてみんなで成長していけるような環境を与えるのが会社の役目であり、僕自身の責任だと感じています。

浦田さん:中尾社長にそういった考えがあるから、グランドビジョンさんはすごくアットホームな雰囲気があるんだと思います。人と人がつながることを大切にされていると感じます。

中尾:浦田さんはゴールボールを始めて8年だそうですが、どんな8年間でしたか?

浦田さん:最初はただ、がむしゃらでしたね。自分の成長がチームの成長につながると思って、1年~3年はとにかくベースづくりの時期にあてました。今振り返ると、あの時期があったからこそ、色んなものが積み上がっていったんだと思います。その次に、チームの中で自分の役割を考えるようになりました。

中尾:ロンドン・パラリンピックの日本代表選手に選出されましたが、仲間同士の戦いもあったんじゃないですか?

浦田さん:やはり仲間はライバルですね。ゴールボールの日本代表はたった6名です。うち3名は北京も経験しているベテランですが、残り3名はまだ経験の浅い若手です。私は「自分がいないと日本は勝てない!」という強い気持ちがありますが、一方で自分が持っているものはすべて後輩に与えたいと思っています。自分のすべてを出して何ができるかを考えています。

中尾:チームで活動していると色んな選手がいると思いますが、どうやって気持ちを一つにしているんですか?

浦田さん:私は思ったことをストレートに言えるタイプなんですが、中にはそうじゃない人もいるので、お互いの良い点も悪い点も指摘できる環境づくりを意識しています。私も以前は、その場の空気が悪くなるんじゃないかと考えて、つい怒れないときがありました。でも、そのときコーチに「信頼してるから言えることがあるんじゃないか、時にははっきりと言うことも必要だ。怒るときは怒れ!」と言われて反省しましたね。今、チームでは「まず、やってみよう!」の精神で、先輩と後輩の会話づくりに取り組んでいます。私たちの活動はコミュニケーションが本当に大切なんです。

中尾:僕は鹿児島出身なので薩摩藩の伝統的な青少年教育だった「郷中(ごうちゅう)教育」の精神で社員教育に取り組んでいます。「郷中教育」は、先輩が後輩を指導することで強い武士をつくっていこうという教育なんですが、やはり怒り方って難しいですね。ただ、僕は怒ってくれることで記憶に残るような先輩になりたいと思います。

浦田さん:怒ってくれるコーチも一人ひとりを細かく見ていますからね。その先の人間の成長を見てくれているという信頼感、安心感があります。一方で、どこまでその愛情をくみ取れるか、選手側の受け皿も必要だと感じます。

中尾:浦田さんはアスリートとして自分に勝つことをとても意識されているようですが、自分に勝つのが一番難しいですよね。どうやったら自分に勝てますか?

浦田さん:確かに相手チームの選手よりも、自分自身が一番の強敵ですね。(笑)
私もすべてに勝てるほど強い人間ではないのですが「ここだけは!」というボーダーラインを決めるようにしています。私の場合、毎日3分間決まったトレーニングを続けるようにしています。たった3分ですが、飲み会があった日なんかは本当に辛いんですよね(笑)。でも次の日の後悔を考えると、やらなきゃ!と思って頑張ります。

中尾:浦田さんは笑顔が本当に素敵で明るいですが、何か意識されているんですか?

浦田さん:最初は意識していました。目は見えないけど、毎日鏡の前で笑顔をつくったりしていましたね。暗い顔をしていると人って寄ってこないですよね。私は人に助けてもらわないといけないので、とにかく明るくしてなきゃ!と思っていたら、だんだんと自然に笑えるようになっていました。最初はムリヤリでもやった方がいいです。そうすると今度は人に興味を持てるようになって「まずはその人の話を聞こう」と思えるようになりました。

中尾:浦田さんが考える、一流の人に共通するポイントってなんですか?

浦田さん:行動が早いことです。私が接した方々は、お礼の電話や言われたことをすぐするとか、ほんの些細なことでもとにかく早いです。

中尾:最後に、浦田さんのビジョン、夢を教えてください。

浦田さん:ずばり、私のビジョンは「周りに勇気を与える存在になること」です。ロンドン・パラリンピックが人生のビジョンではありません。その先にあるもの、それが私のビジョンです。私が関わったことで何かの一歩につながるような、そんな存在でありたいと思っています。

中尾:浦田さんの笑顔に私も勇気をいただきました。ありがとうございました。